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R: 藤崎慎吾『ハイドゥナン』

藤崎慎吾著、『ハイドゥナン』を読みました。例によってAmazonから。内容のご
紹介。
 「西暦2032年。未曽有の地殻変動によって、南西諸島に沈没の危機が迫っ
  ていた。地球科学者・大森拓哉の警告により政府特別機関が設立される
  が、その目的は領海=海底資源喪失を見越しての既得権確保にあった。
  政府の対応に憤る植物生態学者・南方洋司、地質学者・菅原秀明ら6人
  の科学者は、独自の「ISEIC理論」によって地殻変動を食い止めるべく、
  極秘プロジェクトを開始する。いっぽう共感覚をもつ青年・伊波岳志は、
  南方らに同行して訪れた与那国島で、巫女的存在であるムヌチの後間柚
  と出会う。「琉球の根を掘り起こせ」なる神の声を聞いたという彼女は、
  大地の怒りを鎮めるため、“14番目の御嶽”を探してくれるよう岳志に
  依頼するのだが…日本SF史上最高の科学小説、ついに刊行。」

微妙なところもなくはないですが、個人的には結構、楽しく読みました。全部で
4冊とそれなりのボリュームですが、あっという間に読めるだけのエンターテイ
ンメントになってます。

扱われているテーマ、がジェットの多いこと。海洋、惑星探査、プレートテクニ
クス、民俗学、料理コンピュータ、etc. etc. とりあえず、よくこれだけ色々な
テーマを盛り込んだな、と思います。
ただ、それが仇になっているというか、物語を冗長にもしているような。例えば、
木星の衛星エウロパにまつわるエピソードがどのくらい必要だったのか。このエ
ピソードがなくても、この作品は書けたんじゃないかしら、とか。
まあ、これはどちらでも良いというレベルなんだけど、もう一点の方は大きい。
色々と書いているんだけど、科学的にかなり緻密に見える部分と、そうでない部
分が混ざっちゃってて、なんとなく、怪しげになってしまってるところ。それが
惜しい気がするのです。

例えば、紹介にもある“ISEIC理論”。あらゆる物質がネットワークを構成し、
そこに情報や知識、ひいてはモノの履歴までもが保存されている、というような
理論。この理論では、主人公である伊波岳志のような共感覚を持つ人間はそれを
敏感に感じ取ることのできる人、という具合に説明される。これを一言で言えば
トンデモになってしまう。
一方で海洋調査の場面などは、作者の出自にも関連するようで、かなり説得力が
あります。もっとも、僕がそのあたりには疎いので、やっぱり、そういう場面で
もでたらめな可能性もありますが。ともあれ、このあたりのベクトルの乱れとで
もいうべきものが、勿体ない気がする。もっと整理できていたら、と。
まあ、そもそも、谷甲州の解説を読むと作者自身がSFというよりも、伝奇小説を
意識しているというようなことを書いているので、緻密に科学的なプロットを評
価するのは違うのかもしれません。

ただ、科学的に妥当なんだろうな、と思えるような箇所については感心すること
もしきり。上野の科学博物館にあるシアター360(全天型で、入り口などを除く
360度すべてがスクリーンになってる映像施設)で、マントルのアニメを見たこ
とがあるんだけど、その細かなことはこの本でわかりました:-)
あと、たぶん、エコロジーな話しての切り口もあるんだろうと思いますが、そち
らはパス。大事なことではあっても、僕はこの本にはエンターテインメント性を
求めたいので。

繰り返しになるかもだけど、SFとしては違う気がする。伝奇なら伝奇で、もっと、
はっきり割り切るような大胆さ。それがあったら、さらに良くなっていくんじゃ
ないかしら。そんな気がします。
とりあえず、主要な登場人物の一人の30年前を描いた作品があるようなので、そ
ちらも読んでみることにしようかな、と。
18:55 | 書籍 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
E: ミラヴィル(駒場東大前) | top | etc: フェルメール展に行った

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